だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
沈黙...チンモク
ミーティングルームの全面のガラス窓から、大粒の雪が見えた。
粒は大きいけれど、その一粒一粒の結晶が細かく見える雪は外の寒さを物語っていた。
暖房が切られているこの部屋はオフィスの中よりも寒い。
この寒さが、現実味のない自分の感覚を元に戻してくれる気がした。
「追いかけてくれなかったな」
どこまでも追いかけてくれる、と。
勝手に思い込んでいたのだと、身にしみた。
傍にいることが、好きでいてくれることが当たり前なのだと。
そんな訳はないのに。
近くに感じれば感じるほど。
傍にいれば、いるほど。
その大切さを分からなくさせる何かが、いつも邪魔をする。
当たり前のことなど何一つないこの世界で。
圭都だけが不変でいてくれる訳がないのに。
知っているはずなのに。
目の前の大切なものは、いつも簡単に壊れてしまうことを。
カタチのないものは、いつも掴めず。
カタチのあるものは、いつか壊れる。
それは、手のひらに乗る雪に似ている。
綺麗な結晶を掴まえようとすると逃げていく。
掴まえた瞬間、綺麗な結晶は溶けて消えてしまう。
それほど儚いものだと。
知っていたはずなのに。