だから私は雨の日が好き。【冬の章】※加筆修正版
窓に近付いて空を見上げると、明るいオフィス街の上に小さく光る星が見えた。
雪の隙間から見える空は、ほとんど雲がなく晴れているようだった。
ささくれだった気持ちはこの空に溶かしてしまおう、と想った。
電気もつけずに窓の外を見ていると、不思議と気持ちが落ち着く気がした。
給湯室から逃げ出したままで、鞄も何もかもオフィスに置いたままだけれど。
その事も気にせず圭都が帰ってくれればいいのにと想った。
それとは逆に、私を探して此処まで迎えに来てくれればいいのに、とも想った。
そんな矛盾した感情を、一人で持て余していた。
「まだ、二人でいるのかな」
口に出すと不安ばかりが募った。
ただ、あまりにも他人事のように響いて、やっぱりまだ現実感がないと想った。
杉本さんはきっと、出来る限り長く圭都と一緒にいたいと想うのだろう。
そんな杉本さんを見て圭都は、一体何を想うんだろう。
冷たくあしらうことをして傷付けるのか、突き放しきれず優しさを見せてしまうのだろうか。
二人の様子を想像しては、それを頭から振り払う。
どうしても考えていたくなかった。
けれど、考えずになどいられるはずもなかった。
目の前の景色が、少しずつ揺れて見える度、寒さが身体に染み込んでいくようだった。