【完】時を超えて、君に会いに行く。
そう言った瞬間、航の顔が強張った。
思わず一瞬、この私がひるんでしまったくらい。
「……ふざけてんの?」
珍しく聞く、航の低い声。
なんで、私にばっか怒るの。
なんで、私に笑ってくれないの……。
「別にいいじゃん。航だって、彼方と一緒に帰りたがってたし……」
お願いだから、ふたりきりにはしないで。
あの日の金曜日と、同じにしないで。
気づくと、涙腺が緩んでしまってる自分がいた。
ダメ。泣くな。絶対。
下唇を、強く強く噛む。
「…………」
航はもう、なにも言わない。
今日は先に帰っちゃダメなんでしょ?
だから、残って待っててあげるんじゃん。
言われたとおりにしたのに、なにがそんな不服なの。