【完】時を超えて、君に会いに行く。
「……行こう、彼方」
そう言って航は、かばんを持って先に出て行ってしまった。
彼方はずっと、心配そうに私を気にかけてくれている。
「ごめん彼方。気にしないで、行って」
言葉を発すれば、涙が出るとわかってた。
今、キツく唇を噛んでないと、力が抜けて、一気に溢れ出てしまうとわかってたのに。
だけど彼方が、ずっとここにいるから……。
ポロッと涙が溢れてしまった瞬間、私はすぐさまうつむいた。
「未歩……大丈夫だから」
それだけ言って、彼方は教室から出て行く。
なにが大丈夫なの?
さっきの私と航を見て、どこが大丈夫って思ったの?
……もう、どうだっていいや。
私はすぐに美術室へ向かい、しばらく声を押し殺して、ひとりで泣いた。