【完】時を超えて、君に会いに行く。
帰り道。
航は数メートル距離をあけて、私たちの前を歩いていた。
私の隣には、彼方がいる。
ずっと彼方と一緒に帰りたがってたのに、なんで無言なの?
航のことは、小さい頃からなんでも知っていた。
だけど今の航は、全然わからない。
前の金曜日はこんなんじゃなかった……。
もっと楽しかった。
もっとお互い、笑ってた。
そう。あの日はもっと───……。
『おーい未歩。帰ろうぜ』
そう言って、突然美術室に入ってきた航に、私はびっくりして小説をすぐに机の中に隠した。
『ん? 今なに隠したんだよ?』
『な、なんでもないよ! ほら、帰ろっ』
『え〜、なんだよ。気になるだろ?』
『いいから!早く行くよ!』
いつにも増して、しつこかった航。
『おい未歩!幼なじみに秘密はなしだぞ』
『だーかーら! なんにもしてないってばっ!』
そんな航をどうにかはぐらかし、私は大きな背中をグイグイ押した。
いつの間に、この背中はこんなにも大きくなってたんだろう。
そんなことを思ってたあの日……。