【完】時を超えて、君に会いに行く。
私は半ば強引に航を振り切ると、踵を返してもと来た道を走り出した。
すぐそこの横断歩道を渡ったとこにある、文房具屋に向かうだけ。
それだけなのに。
なにを頑(かたく)なに、意地になって隠す必要があったんだろう。
別に小説を書いてるなんて、航にひとこと言えばいいだけなんだけどさ。
やっぱ、ちょっと恥ずかしいじゃん。
ずっと一緒にいたからこそ、言えない。
……ううん、悔しいのかもしれない。
航が私に、好きな人がいるってことを教えてくれないから……だったら私だってこのことを教えたくない。
……これはたぶん、私の小さなプライドだ。
沙奈はいいな。
航に想われていて……。
……あれ?
なにこれ……違う。
そうじゃない。
別に航が沙奈のこと好きなら、応援するし。
だから……こんな気持ち、違う。