【完】時を超えて、君に会いに行く。
目の前にいる航は驚いた顔で、私の背後にいた人物を見ている。
つられて私も振り返ると、そこにはさっきの言葉の主、彼方がいた。
「え……お前、いっつも放課後は用があって早く帰るんじゃ……」
「うん。だけどその用がなくなったから」
そう言えば彼方、前にも昇降口でそんなことを言ってた気がする。
用がなくなったと言って、切なそうに美術室を見ていた。
……その用ってなんだろう?
昨日は日誌を提出するからだと思ったけど、今日は日直じゃないし……。
うーんとひとり、頭の中で考えていると、
「今日は、無理」
航がためらいながら、彼方にそう言った。
彼方は驚いた表情をする。もちろん、近くにいた私も。
どうして〝今日〟なんだろう?
〝今日〟を強調してまで、私とふたりで帰ろうとする理由は、なに?