【完】時を超えて、君に会いに行く。
私も美術室へむかい、席について、ぼんやりと小説を眺めていた。
……なにやってるんだろう、私。
ひとりじゃ航を守れない気がするからって、彼方に甘えて、航にあんな顔をさせて……。
本当にこれでいいのかな……?
妙な焦燥感が、私を襲う。
今更だけど、ちゃんと航の話を聞いてあげたらよかった。
〝どうして今日は、私とふたりで帰りたかったの?〟
素直に聞いてあげればよかった。
だって理由もなしに、航があんなこと言うはずないもん。
彼方のことが大好きな航が、珍しく一緒に帰れる彼方の誘いを断わるなんて。
……絶対に理由があるはずなのに。
私は自分が怖いからという理由で、それを阻止してしまったんだ。
最低だな、私。
……まぁいっか。
後悔しても、もう遅いし。
今日、彼方と一緒に帰って、航を事故にあわせないようにして……
そしてこのことは、またいつか聞けばいっか。