【完】時を超えて、君に会いに行く。
「航」
するとなにを思ったのか、彼方は唐突に航を呼び止めた。
「…………」
航は無言でこちらに振り返る。
相変わらずの仏頂面。
だけどどこか拗ねているような、そんな表情にも見える。
「航さ、今日は未歩に大事な用があったんだろ?」
「えっ?」
彼方は航に聞いているのに、私がびっくりして声をあげてしまった。
「だったらそのこと、ちゃんと未歩に言わなきゃ。俺がいたら迷惑だって、ちゃんと言わなきゃわからないよ」
彼方はいったい、何を言ってるの?
私は呆然としていた。
「うるさいな。お前らにはわからねぇよ。俺の気持ちなんて」
「だから、言わなきゃわからないって言ってるじゃん」
「ちょ……彼方!」
イライラが募ってる航に、さらに追い打ちをかけるように彼方が言うもんだから、焦ってしまう。
こんなこと言うなんて、彼方らしくない。
絶対航を怒らせるとわかってて、わざと言ってる。