【完】時を超えて、君に会いに行く。
「なんで彼方なんだよ!?
こいつは陸上部なんだ!陸上が、走るのが好きなんだよ!!
それなのに……なんで彼方が走れないんだよっ!!」
「航、落ち着いて」
沙奈が航の背中をさする。
ずっと幼なじみをやってきたけど、航がこんなにも取り乱す姿を初めて見た気がした。
それは、今目の前で起きてる出来事が、どれだけ残酷なことかを物語っていた。
「…………」
振り返って、眠ってる彼方を見つめた。
痛々しい姿の彼方が、キレイな顔で目を閉じている。
何か鈍器のようなものに、頭を殴られた気がした。
……奪ったのは、私だ。
彼方の全てを、私が奪った。
「……っ」
「未歩っ!?」
私はその場から走り出して、病室を飛び出した。