【完】時を超えて、君に会いに行く。


「……痛い?」



「全然。へーき」



「……嘘つき」


彼方は、人のために嘘をつく。


自分のことはあとまわしで、人の〝ため〟に、優しい嘘をつくんだ。



「彼方……」



「ん?」



「過去に戻れなくて、ごめんね……」



そう言うと、驚いた顔をする彼方。


だって彼方は私がタイムリープできることを知っている。


だけど、今の私はそれができない。



過去に戻って、彼方を救うことができない。


この痛々しい姿の彼方を、元の姿に戻してあげられない。


無力な自分に、悔しくてうつむく。



「そんなこと言うなよ」



すると彼方のそんな声が、静かな病室で、私の耳に響いた。



「俺は未来を変えたかった。未歩が辛そうにしてるのをもう見たくなかったし、航を失うのも嫌だった。
もしそんな未来になってたら、タイムリープする能力を持ってない俺は、過去に戻れなくてすっげー後悔してたよ」


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