【完】時を超えて、君に会いに行く。


「彼方、無理しなくていいんだよ」



ポツリ、そうつぶやいた。



「え?」



「彼方っていつもそう。辛いときもしんどいときも、文句ひとつ言わず全部ひとりでかかえこむ。そんなのさみしい。
私じゃダメかな?確かに私、頼りないけど、でもできることもある。彼方の支えになりたいよ……」



彼方は大きく目を見開いた。



きれいなその目は、ユラユラと揺らめく。少し、さみしそうに。



「ありがとう。未歩は優しいな」


違うよ。それはこっちのセリフだ。


「……でも、俺のことなんて心配しなくていいんだよ」




目を伏せてるその顔は、どこか自嘲気味に見えた。


まるで、そんな価値すらない……とでも言うように。



なぜか、胸の奥が疼く。



「どうして、そんなこと言うの?」



そんなこと……ないのに。私達にとって、彼方は大切な存在なのに。



でも……そのはずがないのに、たまに距離を感じるのは事実で、なんとも言えない気持ちになる。



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