【完】時を超えて、君に会いに行く。


でも別に私は、航と帰らなきゃいけないとか、そんな風に義務的に思ってない。


今は彼方の支えになれるように、少しでも力になりたいと思ってるのに。



「ここに来たってつまんないだけだし、未歩はさ、いつもみたいに美術室で小説書いてなよ」



……小説。そういえば、ずっと書いてないな。



彼方のことでいっぱいいっぱいで、それどころじゃなかった。



何も言わずに彼方を見ると、相変わらずの優しい笑みを浮かべてる。



その笑顔は、なぜか切ない。



「彼方は……」



「ん?」



「いい。なんでもない」



言いかけて、やめた。


やっぱり彼方は、私がいちいち会いに来るのが迷惑なのかもしれない。


気のせいかもしれないけど、彼方の言動の端々に私と距離をおこうとする意志が感じられる。

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