【完】時を超えて、君に会いに行く。
気づく想い
翌日から、沙奈は様子がおかしかった。
「沙奈、今日も彼方のところにいかないの?」
「うん。しばらくバイトもあるし、バイトない日は絵に集中したいと思って……」
「そっか」
私は納得しながらも、どこか沙奈は元気がないように見えた。やっぱり彼方に言われたことが、きいてるのかなぁ……。
航は相変わらず、陸上頑張ってるし……。
お見舞いに行くのは、必然的に私ひとりってことになる。
私は美術室で原稿を手に取ると、それをカバンにいれて、今日も彼方のいる病院へと向かった。
「俺、ずっと聞いてみたかったんだけどさ」
「ん?」
病室に着いてすぐ、私が荷物を置いて、ベッドサイドのオーバーテーブルに原稿を取り出したときだった。
「未歩と航って、小さい頃どんな感じだったの?」
「えっ!?なに急に!」
彼方の突然の言葉に、思わず顔をあげてしまう。
「ふたりはどんな幼なじみだったのかなぁと思って。航との思い出、聞かせてよ」
彼方がそんなこと聞いてくるなんて、意外だ。
普段、航とどんな話をしてるんだろう?
小さい頃の話とかしないのかな?