【完】時を超えて、君に会いに行く。
私はベッドサイドにある椅子に座り、うーんと昔を思い出してみる。
テーブルに置いていた原稿用紙は、窓の隙間から入ってくる風によってパラパラとめくれていく。
「そうだなぁ。航と私は……」
日が傾くのはすっかり早くなったものだと、オレンジ色の外の景色を見ながらぼんやりと思った。
その中で私は航との思い出をひとつひとつ丁寧に話していく。
家が隣同士で、親も仲がよくて。
小さい頃から走ることが大好きだった航に、私はよく置いてけぼりにされていたこと。
それが悔しくて、必死に追いかけて、よくコケて擦り傷を作ってたことも。
どんなに些細なことも、彼方はなぜか、楽しそうに、相槌をうちながら聞いてくれた。
たまに、「航らしいね」とか、「未歩がそんな子だったなんて、意外」とか、率直な気持ちも教えてくれた。