【完】時を超えて、君に会いに行く。
「中学のとき、ケンカしたことある?」
彼方が聞いてくる質問に、
「あるよ!そりゃーもう数え切れないくらい!」
私は笑って答えていく。
「ははっ。なんだ、今と変わらないんだ」
「うん!だけどね……」
だけど……。
「?」
彼方が首を傾げる。
私は言葉の続きを発することができなかった。
それは、航との思い出を鮮明に思いだしていたから。
「未歩?」
……そうだ。私、忘れてた。
なんで今になって、気づくんだろう。
なんで忘れてしまっていたんだろう。
どんな内容であれ、ケンカしたときはいつも、
――『ごめん、未歩』
いつも、航から謝ってくれていた。
〝ごめん〟って。
〝俺が悪かった〟って、ただそれだけ言って。
ただひとことだけど、とても勇気がいる言葉を……。
私はいつも、航から言わせていた。