【完】時を超えて、君に会いに行く。



「中学のとき、ケンカしたことある?」



彼方が聞いてくる質問に、



「あるよ!そりゃーもう数え切れないくらい!」



私は笑って答えていく。



「ははっ。なんだ、今と変わらないんだ」



「うん!だけどね……」




だけど……。



「?」



彼方が首を傾げる。



私は言葉の続きを発することができなかった。


それは、航との思い出を鮮明に思いだしていたから。



「未歩?」



……そうだ。私、忘れてた。




なんで今になって、気づくんだろう。



なんで忘れてしまっていたんだろう。




どんな内容であれ、ケンカしたときはいつも、




――『ごめん、未歩』




いつも、航から謝ってくれていた。



〝ごめん〟って。



〝俺が悪かった〟って、ただそれだけ言って。



ただひとことだけど、とても勇気がいる言葉を……。


私はいつも、航から言わせていた。


< 198 / 420 >

この作品をシェア

pagetop