【完】時を超えて、君に会いに行く。
――サァァッ。
風が吹き抜ける。
私の髪と、彼方の髪が同時に揺れた。
パラパラとめくれていく原稿用紙は、空白のページ。
私が過去にとらわれて、ずっと書けずにいた未来のページだった。
「俺がいるから」
彼方はポツリ、そうつぶやく。
同時に、うるさかった風が止んだ。
「未歩がどんな選択をしようと、俺はそれを応援する。
だって俺は、未歩の味方だから」
その言葉は、後悔してる私の心をすくいあげていくようだった。
……彼方は、風みたいな人だ。
風みたいに突然吹いてきて、一瞬で私の体を優しく包み込んでくれる。
「未歩が航のこと好きなら、俺は応援する」
だけどすぐに吹き抜けて、今にも消えてしまいそうなほど儚い。
突然現れて、突然姿を消してしまうような……そんな風に、なんだか彼方は似ている気がした。