【完】時を超えて、君に会いに行く。



……だけどいつからだろう?



私が航の背中を見なくなったのは。




「未歩?」



目の前の彼に名前を呼ばれ、顔をあげる。




そこには、不思議そうな表情の彼方がいた。



キレイな顔は、夕日に照らされていて眩しい。





……思い出す。



こんな、オレンジ色の景色。



あれは、木曜日の出来事だったっけ?



私が彼方に、時を超える力の話を打ち明けた日。



すっかり話こんでしまって、帰りが遅くなったあの日、今の景色と似てるオレンジ色の夕日の中、私は初めて彼方とふたりで帰った。



居心地が良くて、すごく安心する。



なんでか守られてるような、そんな気さえした。



彼方のうしろは、例えるとそう、優しかった。




……大きな背中だなぁ。



そんなことを思いながら、一歩だけ彼方に近づいてみたりして。



その距離はまるで、秘密を打ち明けた私と、それを受け入れてくれた彼方の距離。



あのとき純粋に、彼方に近づきたいと思ったの。



だって私は……。



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