【完】時を超えて、君に会いに行く。


「……っ」



やけに切なくなり、私はしばらくその場から動けなくなった。


ぎゅっと胸を締め付けられる感覚が、離れてくれない。




「泣き止んだ……?」



そんな私を心配そうに覗き込む彼方。



これだ。この優しさに、惹かれていた。


私は彼方に、恋をしていた。



理屈では答えられない。


気づいたら、いつの間にか、好きになっていた。




他の人とは違う、〝特別な好き〟。



だから、たぶん。



彼方に航とのことを応援されたことが、ちょっと苦しかったんだ。




時の力って怖い。


時間はこんなにも、人の心を変えてしまうなんて。




好きだと気づいた瞬間、私の中のなにかが動き出した。



陸上で言えば、スタートラインについたような。


物語で言えば、プロローグのような。


始まりはここから。そんな合図。


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