【完】時を超えて、君に会いに行く。
「私、ノンフィクションの物語を書くつもりはないけど、今書いてるこの物語は、私の人生を詰め込みたいの。
高校生の私が生きてきた中で経験したことなんてちっぽけなことにすぎないけど……それでも、伝えたいことを自分なりの物語を通して書き綴ろうと思う。
だからこそ、題名も登場人物の名前も自分が納得いくものにしたい」
彼方は唖然としていた。
長ったらしい私の言葉に、言葉を失ったらしい。
やってしまった……と、すぐに後悔の念が押し寄せてくる。
そんなに小説について詳しくもないのに、偉そうなことを言ってしまった。
「あの、今のは……っ」
「すげー……」
忘れて。そう言う前に彼方の感嘆した声がこぼれ落ちた。
「すごいなぁ、未歩……。その物語の完成が、より楽しみになった」
彼方は私をバカにしてこなかった。
すごいって言ってくれた。
「……彼方って、私が小説の話をするとき、すごく楽しそうだよね」
照れ隠しも手伝って、前々から思ったことを率直に述べてみた。
だけど彼方は、思いのほか目を見開いて反応してみせる。
まるで、図星とでもいうように。