【完】時を超えて、君に会いに行く。


そんな小さな約束を交わしたあとに、もう日が暮れて、帰らなければならない時間だと気づく。



「あ、じゃあ今日はもう帰るね」



「うん。外暗いから気をつけてな」



「はーい」



小さく返事をして、私は帰りの準備をする。


そしてカバンを手に持ったときに、「あっ」と声をあげた。



「そうだ彼方。この原稿、ここに置いといていい?私、今は美術室で書いてないから」



「ん? ……ああ、未歩がいいならいいよ」



「ありがとう」



いつもはカバンにしまって持って帰る原稿を、私は彼方の病室に置いておくことにした。



普段は隠してるこの原稿を、自分以外の他人の場所に置いておくなんて……。


私、どれくらい彼方に心許してるんだろう。



思わず微笑んでしまう。


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