【完】時を超えて、君に会いに行く。
「じゃあ、ここにしまわせてもらおっかな」
私はベッドサイドの床頭台の1番下の引き出しに手を伸ばした。
彼方は基本ベッド上にいるし、1番下の棚は届きにくくて、本人も使ってないだろうと思ったから。
だけど、その棚を開けようとしたとき、
「触るなっ!!」
叫ぶような必死な声とともに、彼方は私の腕を掴み、棚を開けるのを阻止した。
驚いたなんてものじゃなかった。
彼方が声を荒げる姿に、私は呆然としてしまう。
目の前にいる彼方はすぐに、〝まずい〟という顔をして、口に手を当てた。
そして、
「ごめん」
小さな声でそうつぶやく。
「…………」
何か言わなきゃと思うのに、うまく言葉がでてこない。
長い沈黙が続く。
「ごめん、未歩。そこの棚には、触らないで……」