【完】時を超えて、君に会いに行く。




新しい万年筆を持ち、トントンと2回ほど原稿用紙に軽くあててみる。



おだやかな風。


親友の鉛筆を走らせる音。



そのどれもが心地よくて、目を閉じると、自然とあたしの中に物語が流れ込んできた。


まるで、奏でられるメロディーのように。




この物語の主人公……少年は、大切なものを失う。

なによりも大事な存在を失う。

夢も希望も、生きる意味さえわからなくなったその少年は、狭い世界に塞ぎんでしまい、前を向けずにいた。

明日という未来を諦めていた。

だけどある日、少年は不思議な少女と出会う。

その少女は自分より小さく、儚い存在だけれど……屈託なく笑う姿はとても美しい。眩しいくらいに。



明日が見えなくて、前に進めなくて。


あの日を許せなくて、あの頃に戻れなくて。


絶望の淵に立たされてる少年に、彼女は言った。


――ねぇ知ってる?

君は過去ばかりを見ているけれど。

振り返ってみれば、前を向いてみれば、わかるでしょう?


あなたには、未来がある。

ひかり輝く、未来があるよ。


……あなたの未来は、まだ奪われてないよ。


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