【完】時を超えて、君に会いに行く。



――少女は少年に、忘れられていた。


少年は過去に大切なものを失ったときに、そのショックから自我を守るために、自らそのときの記憶を、手放していた。


……過去に彼女と出会っていたことすらも。



けれど少女にとって、そんなことはどうでもよかった。


彼が覚えてなくとも……



「私が覚えているからね」



笑ってそう言う少女の言葉の意味を、少年はまだ知らない。



そして、彼女にはタイムリミットがあった。


いつ消えるかわからない儚き命を、残りわずかな時間を、少年のために捧ぐと決めた。




――ちっぽけで、地位も名誉も、なにも持ってない私だけど。



夢を忘れ、未来を手放そうとしてる君を……。


悲しみに暮れる君を救う為なら、私、なんだってできる気がするの。


たくさんの人の役にはたてないけど、好きな人の為になら、私できるよ。



……彼方。



大切な君を守る為ならば――……。


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