【完】時を超えて、君に会いに行く。




「未歩さぁ……」



しばらくして、集中して物語にのめり込んでいた私の耳に、ふと沙奈のそんな声が届いた。



……ビックリした。



そうだ。ここは美術室で、私は沙奈の絵の対象になってたのをすっかり忘れてた。


ここまで集中してたなんて……。


目の前の物語に、思わず息を漏らしてしまう。



書きかけの物語をそこで止め、私は沙奈の方へ顔を向ける。



「なに?」



首を傾げてみるも、沙奈は自分から声をかけたにも関わらず、ずっと絵を描いてる。


こっちを見ようともせず、視線はずっと白い紙のまま、私に問いかけた。



「私になにか、言うことない?」



実物の私を見ずに、まるで、絵の中の私に問いかけるかのように。


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