【完】時を超えて、君に会いに行く。
彼方はなぜ、沙奈のことを好きなのに告白を受け入れなかったのだろうか。
それとも、彼方は私に嘘をついていたのだろうか。
沙奈のことが好きって言葉。あれは嘘だったのかな?
わからない。だって彼方が嘘をつくときは、誰かの〝為〟の嘘だから。
「私、彼方に嫌われたかもしれない」
「どうして?」
「彼方に一定の距離以上、踏み込もうとしたから」
思い出すのは先日の出来事。
書きかけの原稿用紙を、彼方の病室に置いておこうと、床頭台の引き出しにしまおうとした。
すると彼方は声を荒げた。〝触るな〟って。
近づくと拒まれる。
そんな気がして、なんだか彼方に近づくのが怖くなった。
だから病院へ行けなくなった。彼方をひとりにさせてしまった。