【完】時を超えて、君に会いに行く。
「彼方は」
その声にハッとし、気づけば沙奈は既にもとに戻っていて、再び自分の手元のスケッチブックを見て、言った。
「未歩のこと見てたから、未歩が悩んでたことにも気づいてくれたんでしょ?」
「…………」
「そんな人が、未歩のこと嫌いなはずないよ」
断言するように、沙奈は言う。
私は何も言えず、ずっと口を閉ざしたままだった。
知ってるよ。
彼方が優しい人だなんて、そんなの知ってる。
あの棚に触れることを拒絶したのもきっと、なにかしらの理由があるはずで。
けれど彼が隠してる秘密が、私にはわからなくて。
なぜかそれが、とても重大なことのような気がして怖いんだ。
知ってしまったが最後。もう元には戻れないような……。
そんな嫌な予感がしてならない。
恋をして、臆病になった気がする。