【完】時を超えて、君に会いに行く。



「完成」


いつの間に、残りの作業をしていたのだろうか。


沙奈は私に、スケッチブックを見せてきた。



その絵の中に収まる小説を書いている私の横顔は、とてもイキイキしていて。


他人の目にも、こんな風に映ってるんだと知った。


それを見て思い知らされる。



私はやっぱり、小説を書くのが好きなんだ……と。



この物語に、私の全てを詰め込みたい。

この物語の少女のように、強くありたい。



好きな人に近づくのは、ときに苦しく切ないけれど、それでもどこかに確かな温もりがある。



――だから少女は心に決めたんだ。



彼がたった一度笑えるなら 自分は何度だって傷ついてもいい。



彼がなにか一つ掴めるなら 自分はなんだって失ってもいい。


無力な自分にできることがあるならば、なんだってしてみせると。


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