【完】時を超えて、君に会いに行く。
「上原、小説書いてたんだな。でもそれ、ずいぶん昔に書いたもんだよな?めっちゃ古そうじゃん」
「うん……」
何年前のもの?
そう問いたくなるくらい、色褪せてしまったセピア色の原稿用紙。
そのたった1枚だけが今、私の手元にある。
「とりあえず、俺の用はそれだけ。
誰もいないとこで上原に返した方がいいよな〜って思ったから、図書室まで呼び出したんだよ。 悪かったな」
「ううん。わざわざありがとう。助かった」
「おう。じゃ、俺行くわ。お前はまだ残る?」
「うん。まだいようかな」
「じゃあ、これ。図書室の鍵」
そう言って、寺本くんはいつぞやと同じように、図書室の鍵をあたしに預けて図書室を出て行った。
私は1枚の原稿用紙を見つめながら、ひとりその場で佇んでいた。