【完】時を超えて、君に会いに行く。
「帰るぞ」
私に背を向け、航は先に歩き出した。
どうしたんだろう?
戸惑いながらも、おとなしくその後ろを着いて行くと、航は突然立ち止まり、後ろを振り返った。
続けて私も立ち止まると、航は少しさみしそうな顔をして、拗ねたようにつぶやいた。
「今日くらい、隣にこいよ」
「えっ?」
「お前と帰るの、久しぶりだろ?
ずっと彼方の見舞いに行ってたから、お前」
……何が言いたいの?
私にはちっとも意味がわからなかった。
「お前、いつも俺の後ろを歩くよな?話しにくいから、こっちこいよ」
「…………」
なんだか航の様子がおかしい。
複雑な表情になんとも言えない気持ちになり、私はおずおずと航の隣に並んだ。
こうして横に並ぶのは、いつぶりだろう?
ずっと昔のような気がする。
私が、航との関係を冷やかされるのがイヤで、少しずつ歩く場所を航の隣から後ろへとずらしていったから。
……だけど航は、何も言わなかった。
お互い、そのことに関しては今まで何も言わなかったのに。
どうして今日は、そんなことを言うんだろう?