【完】時を超えて、君に会いに行く。
航はもう一歩、私に歩み寄ってきた。
今までの距離を、埋めるかのように。
縮まらない距離を、なくすかのように。
そして、私の頭に手をのけって、ポンポンっと優しく撫でくれた。
不謹慎にも、思ってしまう。
今まで私がやってきた事が、本当に正しいかどうかなんてわからないけど。
過去を変えて、確かにたくさん、辛い想いもしたけど……。
……こうして今、航が温かい事が、本当に嬉しい。
「未歩、好きだよ」
「……うん」
「ずっと、好きだった」
航は今、どんな気持ちでその想いを伝えてくれてるんだろう?
悔しいのかな?寂しいのかな?悲しいのかな?
……私、すごく苦しいよ。
――ぽろっ。
あれ?
なんで、涙なんて溢れるんだろう?
なんで……。
――『おい未歩ー!早く来いよー!』
――『待ってよ航〜!速いよぉ』
声が聞こえた。
走馬灯のように蘇る懐かしい記憶の中にいる、幼い航と私の声が。
ずっと、ずっと航だけを見ていた。
航の小さな背中だけを見つめて、追いかけていた。
後ろを振り返って、満面の笑みを見せて
『未歩!』
私を呼んでくれる幼なじみに、追いつきたくて。
その笑顔を、1番近くで見られる距離に、届きたくて。
走るのが大好きな航の背中を、ずっと見つめていた。