【完】時を超えて、君に会いに行く。
このままずっと、そばにいると思ってた。
ずっとそばに、いてほしいとおもってた。
たったひとりの大事な男の子。
鼻の奥がツーンとする。
目頭が熱い。
こんなとき、優しい航はいつも私の涙を拭いてくれた。
だけどもう、そんな君はいないんだね。
私は自分で、この涙を拭かなきゃいけないんだね。
「……航っ」
「……ん?」
名前を呼ぶと、航は抱きしめる腕をゆるめ、私の肩に手を置き、顔を覗き込んできた。
ちゃんと名前呼べば、こうやって面と向かって向き合ってくれるってことを知っていたのに、どうして私は忘れてたんだろう。
どうして忘れることが、できたのかな。
「……私ね、ずっと航に秘密にしてたことがあるの……っ」
震える声は、うまく届くかわからない。
だけど、伝えなきゃいけない気がした。
伝えたいと思った今、伝えなきゃ……。
航にはもう二度と、言えるチャンスが来ないと思ったから。
「聞くよ。未歩のこと。未歩が言いたいこと、全部」
一瞬のためらいのあと、ふっと笑った航の顔は……。
「だって俺、未歩の幼なじみだから」
幼なじみの顔は、すっかり大人びて見えた。
前に進んでたのは、どちらだったか。