【完】時を超えて、君に会いに行く。



「……小説、書いてるの」


「え?」


「私、小説書いてるの。物語が好きで。でも恥ずかしくて、航に言えなかった。」


「……そっか」



航はそこまで驚かなかった。



「確かに未歩、小さい頃から絵本とか好きだったもんな」



「……え? そうだっけ?」



「そうだったろ?白雪姫になりたいとか言ってさ。
俺が、白雪姫は毒リンゴを食べるんだぜ〜とかゆったら、じゃあ自分がそんな悲しい物語じゃないの作る!とかゆってたじゃん」



「……嘘、そんなこと言ったっけ? なんでそんなこと覚えてるの??」



驚きすぎて、涙が引っ込んでしまった。


だって、本人も忘れてたのに……そんな昔のこと。



「ずっとそばで、見てきたからに決まってるだろ?」



得意げにそう言った航に、私はすごく嬉しい気持ちになった。



あぁ、そっか。


航はずっと、私のことを見てくれてたんだね。



きっと、それに気づけるチャンスはいくらでもあったはずなのに、自分のことしか見えてなくて、私は見落としていたんだろう。


……取り返しのつかない今になって、気づくなんて。



自分の不甲斐なさに、また涙がこぼれた。


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