【完】時を超えて、君に会いに行く。


「また泣くのかよ。 いい加減泣き虫卒業しろ、ばぁか」


「な、泣いてない」


「あっそ。まぁどうでもいいけど。俺は拭いてやらねーぞ」



……わかってる。


もう、自分で拭かなきゃダメなんだってことくらい。


だけど拭えど拭えど、涙が止まることはなくて。涙で滲んだ世界の中に、航はいる。



「じゃあ俺、そろそろ行くわ」



くるりと背中を向けた君に、あたしは胸が苦しくなった。


幼なじみが、前を向いて歩き出そうとしている。



離れないで。置いてかないで。小さい頃の私が叫ぶ。



だけどそれは前までの私。


決めたじゃない。今の私は、彼方を救うんだって。



だから私も、ちゃんと前に進もう?


大丈夫だ。私ならできる。



なんたって、あの航の幼なじみの上原未歩なんだから。



「航……好きだった」


「うん」



ずっとそばにいると思ってた男の子が、私に背を向け離れてく。



離れても、私たちはずっと幼なじみだよね?



「俺も、好きだった」


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