【完】時を超えて、君に会いに行く。


私の横を通り過ぎて、病室に入った看護師さん。そして病室内を見渡した。




……なに?



嫌な予感が頭をよぎる。


私がお見舞いにこない間に彼方の容態が急変したとか……?


そんなの、やだ。



「もう!彼方くん、また逃げ出したのね……」



「……えっ?」



独り言みたくつぶやいた看護師さんに、私はポカンとしたまま、首を傾げた。



「彼方くん、最近この時間帯になるとフラッとどこかへ消えてしまうのよ。
本当は安静にしてないといけないのに、今はもう松葉杖を使ったらひとりでどこかへ行けるくらいになってて……。

いなくなったとき、ここの医療スタッフ総動員で探しに行ったのに、いつの間にか平気な顔して帰ってきてたの。そのときはビックリしたわ……」



必死に探しに行ったこっちの身にもなってほしいですよねっと、ブツブツ文句を言ってる看護師さんの言葉はどこか遠く。


私はいなくなった彼方がどこにいるのか、気になって仕方なかった。


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