【完】時を超えて、君に会いに行く。



「…………」



「とりあえず、このことを他の看護師達にも伝えてくるから私は行きますね。
失礼します」



それだけ言って、看護師さんは彼方の病室を出て行った。



この部屋で、ポツンとひとりぼっちになった私。


殺風景な病室を、キョロキョロと見渡した。




……いったいどこに行っちゃったの?




空っぽのベッドに近づき、そっと触れてみた。



そこに温もりはなくて。



もう彼方がでて行ってから、ずいぶん時間が経ってしまっているのかもしれないと思った。



「……あ」



ふとそのとき、ベッドの横にある床頭台が目に留まる。



私が棚を開けると彼方が声をあげて阻止した扉が、少しだけ開けっ放しになっていた。



ドクンと胸が脈打つ。



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