【完】時を超えて、君に会いに行く。


「あっ……」



その原稿用紙が、3日前に私が机の中にしまっておいたやつだということに気づいた。


いつの日だったか、彼方の病室に置いておこうと思ったら、拒まれた原稿用紙。


私が時を超えてから、新たに紡ぎ始めた小説だった。




「なんで、それを?」


「 俺、いつもみんなに一緒に帰ろうって誘われても、断ってただろ?それがなんでかわかる?」



急に話を変えられて、困惑した。


今はそんな話がしたいんじゃないのに、なぜ彼方はそんなことを聞くんだろう?



今のこの原稿用紙と、何が関係あるの?



無言のまま硬まってしまってる私に、彼方は容赦なく言い放った。



「放課後、みんなが帰ってから、俺はいつもここに来て、未歩の小説を読んでたからだよ」



頭の中は、もう真っ白だ。


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