【完】時を超えて、君に会いに行く。
「俺、ずっと遠い世界の最果てのような場所からここに来たんだ。
俺の生まれた場所で見つけた、この物語の続きを知るためだけに」
そう言って、彼方はもう片方の私の手の中にある色褪せた原稿用紙に触れた。
「これを見つけたのはホントに偶然だった。原稿用紙のまま、大事に保管されていた」
目を閉じて、感慨深くなにかを思い出している彼方。
私は彼方の言葉に耳を傾けながら、少しずつ胸の中で引っかかっていた出来事を思い返していく。
「なぜこの物語は、未完成なままなんだろう?作者はどうして完成させなかったのか、気になって仕方なかった」
――なぜ彼方は、私が小説の話をするたびに嬉しそうだったのだろう?
「この物語の作者に会ってみたいと思ったんだ。小説が完結していない理由を、知りたかったから」
――どうして彼方は、いつも私達と一定の距離を置いているんだろう?
「そしてあわよくば、この物語の完成を見届けたいと思った」