【完】時を超えて、君に会いに行く。




「……彼方が、この時代の人じゃないから?」



「……うん」



「未来の、人だから……?」



「うん。ごめんな、黙ってて」



彼はあっさりと肯定した。


撤回するそぶりもないまま、ずっとそうでないと願ってた私の願いも儚く、今ままでにないくらいへたっぴな笑顔を見せる。



器用な彼方とは思えないほど、不器用な笑顔だった。



「たくさん迷惑かけて、ごめん」



彼方はつぶやくと、私の握っていた手を手放した。



それがさみしくて、すごく泣きたい気持ちになる。



胸の奥がすごく苦しくて、深く息を吸った。


彼方の優しい匂いに、心が満たされていく。


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