【完】時を超えて、君に会いに行く。
「どうしてこの時代の人間じゃないってこと、私に黙ってたの?」
1番聞きたかったことをたずねると、離れた手は宙を仰いで私の頭を優しく撫でた。
「……どうしてって、そんな大きな理由はないよ」
少し、ドキリとした。
彼方がこんな風に私に触れることが珍しくて、心の準備をしてなかったから。
「言ってくれたら良かったのに……」
「わざわざ言う必要もなかったし、下手したら未歩を混乱させるかもしれなかったから……」
あ、そっか……。
あの頃の私が、彼方からいきなり未来人だと打ち明けられて、まともに受け止められたかと聞かれると、難しかったかもしれない。
私が混乱するくらいなら、あえて正体を明かす必要もないだろうと、彼方はたぶんそう考えたんだ。
やっぱり、優しいな。
彼方が嘘をつくときは、たいてい誰かの為なんだ。