【完】時を超えて、君に会いに行く。
俺は、どこにでもあるような平凡な家に生まれた。
ただ、俺自身が生まれた瞬間から、周りの子供と違っていた。
俺は生まれつき、心臓が弱かったんだ。
俺の時代では、自然治癒力が進んでいる。けれどそれは後天的なモノの治癒が早いだけで、先天的に悪かったものが治るわけではない。
ましてや心臓なんて、いつか必ず止まってしまうもの。
俺は生まれてすぐに、死ぬはずの運命だったんだ。
だけどその運命は、両親が他人の高額な心臓を買い取ったせいで改竄された。
俺は他人の命を借りて、荒んだ時代に生き残ってしまった。
……多額の借金と引き換えに。
両親は借金を払いきれずに、それ以来、夜遅くまで働き、苦しみ、疲弊していた。
それでもいつも、俺を愛してくれた。
俺を必要としてくれた。
それだけが、こんな俺でも生きていていいと思える時間だった。