【完】時を超えて、君に会いに行く。
そして……数ある作品の中で、俺はとある物語に出会った。
それが、未歩の物語だった。
未完成なまま、まるで、独りぼっちに取り残されたような物語。
なぜか自分の家の書斎部屋に、大切に保管されていた。
それは本ではなく……色褪せた原稿用紙だった。
題名も、物語に出てくる登場人物の名前も書かれていない、空白だらけの物語。
正直、古すぎて文字が霞んでいて、すごく読みにくい。
しかも完結はできてなくて……作者が途中で書くのを放棄してしまったと思われる。
無責任だと思うのに、なぜか無性に心惹かれた。
ひとつひとつの文章とか言葉が、俺の心をひどく疼かせて、頭の中に残って離れてくれない。
……どうしてこの作品を、この人は最後まで書かなかったんだろう?
〝うえはら みほ〟。
作者の名前は、おそらくだけどそう読むんだと思った。
今までたくさんの本を読んできたから、過去のことならよく知っている。昔使われていた言葉も、漢字も把握していた。
そのおかげで、この作者が生きている時代をだいたい推測することもできた。
未来を歩くと書いて、みほ。
書いたのは、ずっと前の過去の人物。
今を生きる俺と、交わることはない。
わかってる。
だけどやっぱりこの人を知りたと思ってしまう。