【完】時を超えて、君に会いに行く。
物語は俺に訴える。
何かを失って辛くても、生きることが苦しくなっても生き続けろって。
生きてたら、何度だってやり直せる。
もう戻らない日々に囚われるのをやめたとき、未来までは奪われてないってことに気付けるはずだから……と。
だけど突然、プツリとその希望の光が途絶えるように、物語の続きは紡がれずに終わってしまっていた。
なぜなのかはわからない。けれど俺は信じ続けた。
こんな荒んだ世界でも、がむしゃらに生きてたら、いつか自分が生きる理由を見つけ出せる日がくるんじゃないかって……。
信じ続けたんだ。意地でも。
この物語は、俺にたくさんのものを与えてくれた。
おかげで俺は、空っぽじゃなくなった。
なにより、〝上原 未歩〟という存在こそが、俺の心を満たしてくれた。
この人は、どんな人間なんだろう?
どうしてこの作品を最後まで書かなかったんだろう?
登場人物の名前がないのはなぜ?
題名が空白なのは、なにか理由があるのか?
そんな些細なこと全てが気になってしまって、片時も頭から離れない。
いつからか、彼女のことばかり考えるようになった。
そうしたらもう、会いにいくという選択しか思い浮かばなかった。