【完】時を超えて、君に会いに行く。
それから俺は、中学時代の彼女を見守った。
もちろん、直接的に関わったわけではない。
ただ遠くから、彼女の過ごす日々を見守っていた。
そして、彼女が上原未歩であると確信を持ったとき、俺はどうしようもないくらいの達成感と嬉しさで心が満たされた。
まるで、この出会いを待ち焦がれていた少年のように。
「……やっと会えた」
俺を救ってくれた人。
俺を守ってくれた人。
そんな君に尋ねたい。どうしてあの物語を最後まで書かなかったのか。
中学生の未歩は、小説を読むことはあっても、書くことはしていなかった。
そして、航と呼ばれる幼なじみとの関係性を冷やかされ、悩んでいることもわかった。
……ああ、この子は幼なじみに恋をしているのか。
恋心をわからない俺でも、彼女を見守ってるなかでそのことに気づいた。
……本人は気づいてないから、自分のことに関しても鈍感らしい。
そんなところが少し可愛いと思ってしまったのは、内緒。