【完】時を超えて、君に会いに行く。
だけど、事故現場を見つめる彼女の瞳が絶望に染まったのが、俺にはわかった。
ほどなくして救急車で運ばれた航に与えられた運命……。
それは、小さな頃からアスリートになるという夢を持つ少年にとって、あまりにも残酷だった。
一命を取り留めた航は、救われた命と引き換えに、今まで走ることのできていた足を失うことになった。
もう二度と走ることのできない航。
夢を断念せざるを得ない航は、自責の念に襲われる幼なじみの未歩を恨むことはなかった。
「ごめん……航。私のせいで、本当にごめんなさい……」
「お前のせいじゃねぇから。あんま自分責めるなって」
そっと、泣きじゃくる少女を優しく撫でる少年を見て思う。
そうか。
航は、未歩のことが大切なんだ。
走ることが1番好きだと言っていた彼には、それ以上に大切なものがあったらしい。