【完】時を超えて、君に会いに行く。
航は気づいていた。
未歩がいつか、自分の前から姿を消そうとしていることに。
それを恐れた航は、何かひとつでも未歩との繋がりを持っていたかったんだろう。
「その小説の原稿用紙、捨てるくらいなら俺にくれないか。俺の一生の頼み。それだけでいいから……頼む」
それからずっと、航はそれだけを大事に持っていた。
未歩は離れてしまったけれど、またいつか会えると信じて、ずっと……。
……和泉 航。
彼の苗字を知った時から、薄々と思ってたんだ。
……もしかしたらって。
俺の本当の名前は、和泉 彼方。
航が大事に保管していた未歩の原稿用紙が、俺の時代まで受け継がれていて、俺の家で見つかった理由を知ったのは、このとき。