【完】時を超えて、君に会いに行く。



それから未歩は、俺なんかのために、毎日病院に通って、見舞いに来てくれるようになった。



だけど俺は、未歩が俺に会いに来てくれることを心から歓迎しなかった。



俺のために費やす時間があるくらいなら、小説を書いてほしかったから。


それだけじゃない。



俺が事故に遭ったのは自分のせいだって責任を感じて、未歩に後悔の気持ちが残っていれば、なにかの拍子に俺と未歩が触れてしまい、超振動が起きて再び未歩を過去へ飛ばしてしまうおそれがあったから。



だから、わざと遠ざけていたんだ。



遥か遠い先の時代に身を置く俺が、この時代の人と交わることは本来、許されてはいけないこと。



ある程度の距離感ならまだしも、深く関わることは避けるべきだ。


なぜなら、俺の目的は、ただ未完成の物語の完成を見届けること。


それ以外のことはどうでもよかった。



この時代の人間に心を許すことなく、一線を画することが1番だと思ってた。



……思ってたんだ。



あの日、未歩がたくさんのりんごを手に、俺の前に姿を現すまでは……。




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