【完】時を超えて、君に会いに行く。
ふわりと未歩の涙を拭うと同時に、俺はハッとした。
ふいに触れてしまったことで、未歩を過去に飛ばしてしまうと思って焦ったんだ。
未歩の後悔と、俺のタイムリープする力が触れ合うことで、時を超える力が発動する。
だけど彼女は消えなかった。
キレイな涙を見せながら、俺が触れていてもずっと目の前にいてくれたんだ。
それを見て確信した。
なんだ……この子はもう、大丈夫なんだ。
ちゃんと前を向いて、歩き出していたんだ。
過去に囚われず、ちゃんと前を見据えて、〝未来〟へ〝歩いて〟いる。
泣き顔を見られたことが恥ずかしかったのか、焦った未歩は持ってきた大量のりんごを落っことしてしまった。
そんなドジなところも可愛くて、クスクスと笑いながら落ちてるりんごの1つを拾い、俺は微笑まずにはいられなかった。
理由は、りんごの底にバーコードシールが付いていたから。
ああ、この子は嘘をついていたんだ。
俺に会うために、わざわざ近所の人にたくさんもらったからって口実を考えて、どこかで買ってきてくれたんだ。
そんな優しい嘘は、俺の心を温かくしてくれた。
もうそれだけで、俺が〝あの決意〟をするには十分だった。