【完】時を超えて、君に会いに行く。
「ねぇ彼方。私、ひとつ気になることがあるんだけど……」
トリップしていた俺を、未歩のその言葉が現実に引き寄せた。
「……ん? なに?」
「本当に、彼方のおじいさんとおばあさんは、本物のおじいさんとおばあさんじゃないの?」
……そのことか。
これも説明すれば、きっと、君に悲しい顔をさせてしまうんだろうな。
「そうだよ。さっきの話にあったように、あの人達に子供はいない。……俺が、偽物の記憶を与えたんだ」
「……!」
思ったとおり、未歩の瞳が悲しげに揺らいだ。
泣きそうな顔が、俺の胸をひどく締め付ける。
未歩の傷つく顔を見るのが、今は1番辛い。
「未来人の俺が、この世界に順応するのはたやすいことだったよ。
この時代で生きるために、何度か俺の力で人の記憶を改竄させ洗脳させた」
けれど、俺がこんなにも残酷なことを容易く口にできるのは、この先のことをもう決めていたから。