【完】時を超えて、君に会いに行く。




「ねぇ彼方。私、ひとつ気になることがあるんだけど……」



トリップしていた俺を、未歩のその言葉が現実に引き寄せた。



「……ん? なに?」



「本当に、彼方のおじいさんとおばあさんは、本物のおじいさんとおばあさんじゃないの?」




……そのことか。



これも説明すれば、きっと、君に悲しい顔をさせてしまうんだろうな。




「そうだよ。さっきの話にあったように、あの人達に子供はいない。……俺が、偽物の記憶を与えたんだ」



「……!」



思ったとおり、未歩の瞳が悲しげに揺らいだ。


泣きそうな顔が、俺の胸をひどく締め付ける。



未歩の傷つく顔を見るのが、今は1番辛い。



「未来人の俺が、この世界に順応するのはたやすいことだったよ。
この時代で生きるために、何度か俺の力で人の記憶を改竄させ洗脳させた」



けれど、俺がこんなにも残酷なことを容易く口にできるのは、この先のことをもう決めていたから。



< 331 / 420 >

この作品をシェア

pagetop