【完】時を超えて、君に会いに行く。
「おはよーっす。 ん?何してんの?お前ら」
突然、背後から聞き慣れた声が聞こえてきた。
「あ、航! おはよう」
私の向かいにいた沙奈は、背後にいるであろう私の幼なじみに向かってそう言う。
私もつられて振り返った。
「……航、 おはよう……」
そのとき、スーッと頬に一筋、冷たい何かが伝う違和感を覚えた。
「え、未歩? お前、なんで泣いてんの?」
航が驚いた顔で私の顔を見ている。
……え?
私はそっと、自分の頬に触れてみた。
航の言う通り、確かに私のまぶたからは、涙という雫がこぼれ落ちた。
……あれ?
「未歩、どうしたの?もしかして、また体がしんどい?」
「……ちが、」
私は首を横に振って否定する。
そんなのじゃない。
だけど、なぜかすごく悲しい。
張り裂けそうな胸の痛みが私を襲う。
その日は結局、自分の心の一部に空虚感を感じながら1日を過ごした。